今、最もクラシックなトライアンフ。その名を「T100」という。
強く「クラシック」を感じる900ccバーティカルツイン

空冷バーティカルツインに別れを告げ、水冷エンジンとなったトライアンフのモダンクラシックライン。ざっくり二年ほど前は「空冷独特の味わいが失われるのか」なんて物議を醸したものだったけれど、そんな話も今は昔。新しい水冷バーティカルツインは、空冷時代よりも圧倒的にテイスティな味わいとパフォーマンスを手に入れ、今ではほとんどのライダーが、最新のエンジンこそ最良であると疑っていない。

そんなトライアンフはこの2年間、過去に類を見ないほどの大躍進を遂げた。結果がすべてを物語る。トライアンフは大成功を収めたのだ。
でも、やっぱり根底として、旧き良き時代を懐かしむ向きもいる。新世代バーティカルツインを搭載するラインアップのエントリーモデル「ストリートツイン」はデザインから現代的に洗練されているし、1200㏄の大排気量エンジンを採用したボンネビルT120は最高出力80馬力(スラクストンに至っては97馬力!?)の高性能を手に入れ、細部も現代的にアレンジを受けた。
もちろんこれらはすべて正しい進化で、本当に素晴らしい完成度だから、それを否定するつもりはまったく無いけれども、世の中には「そこまでパワーはいらなかったかも」「昔のデザインが好き」という英国車を愛して止まないライダーも(今ではマイノリティかもしれないが)確実に存在する。
そういう人にこそ知ってほしい、ボンネビルT100

大枠としてT120の車体に、ストリートツインの900㏄エンジンを積んだ仕様がそれで、車格はT120と同等ながら、30万円ほどロープライスとなっている。こういう立ち位置のバイクは、えてして中途半端と言われたりしやすいものだけれど、T100に至っては、それは当てはまらない。
T100こそは、現行ラインアップの中でトライアンフの伝統を色濃く継承している、いちばんクラシックなボンネビルなのだ。

ブレーキはダブルディスクよりも性能は劣るかもしれないが、ワイヤースポークが映えるシングルディスク。でも、これでいいのだ。クラシックとしては、T100のほうが、より正しい。
それに、走りのフィーリングだってT100が最も、往年の英国車らしさを感じさせてくれる。英国車の伝統ここにあり、T100はそれを教えてくれるオートバイだ。(文:北岡博樹)