走りという部分においては、現行のモダンクラシックのラインアップの中でT100が最もクラシカルで、往年のトライアンフらしさに溢れている。その理由をお伝えしよう。

求めるものは「速さ」ではない。

画像: 求めるものは「速さ」ではない。

前編はこちら

「高トルク型」と銘打って開発された新世代の水冷バーティカルツインは、1200㏄のボンネビルT120に至っては、もはや低速トルクの塊のような力強さを発揮し、タイトなワインディングといったステージでは、ちょっとパワフルすぎると感じる瞬間すらある。

もちろん現代的な電子制御でパワーモードを「レイン」に変更すれば、T120も荒々しさは抑えられるし、トラクションコントロールもあるから、システムとして安心と言えば安心なのだけれども、同じシチュエーションでT100に乗ると、人としての「安心」はこっちだな、と感じる。

ダイレクトに言ってしまうと、スロットル全開でコーナーから立ち上がる面白さを、誰もが安全な範囲で味わえるっていうことだ。

画像: TRIUMPH BONNEVILLE T100 www.triumphmotorcycles.jp

TRIUMPH BONNEVILLE T100

www.triumphmotorcycles.jp

味わい深いエンジンには共通項がある?

ところで話は変わるけれど「味わい深いエンジン」というものには共通項があると、ボクは個人的にずっと思っている。それは「ロングストローク」である、ということ。ちなみにT120の1200㏄エンジンは燃焼室のシリンダーボア(内径)×ストローク(行程)が97・6㎜×80㎜。ストリートツイン系の900㏄エンジンが84・6㎜×80㎜。相対的に見れば……という話だけれども、900のほうがロングストローク設計ということになる。

画像: 味わい深いエンジンには共通項がある?

だからと言う訳ではないけれど、アクセルを開けていくときの、エンジンが身を震わせている感じが900のエンジンは実にいい。1200のエンジンは絶大な低速トルクで、街中をすこし流した時などに満足感がわかりやすいのだ。それに比べると900は物足りなく感じるかもしれないけれど、それはストップ&ゴーを繰り返す街の中での話だということを覚えておいてほしい。

画像: 周囲を威圧せず、乗り手ひとりを桃源郷に連れて行くサウンドが楽しめるマフラー

周囲を威圧せず、乗り手ひとりを桃源郷に連れて行くサウンドが楽しめるマフラー

ちょっと郊外の道を気分よく流す時や、ワインディングロードでは、T100の印象は一変するのだ。実に奥ゆかしい味わいがあって、小気味良く高回転までエンジンが吹け上がっていく。この伸びやかさにも、往年の英国車を思い起こさせるものがある。

 そのうえでハンドリングもT100は素晴らしい。まずT100と基本的に同じフレームは、1200㏄も搭載する前提での設計なのだから、T100にとって剛性は充分すぎる。というか、このフレームは900のほうが相性が良いのでは?とさえ感じるほどだった。

すべてが穏やかなT100の世界

画像: すべてが穏やかなT100の世界

よく動く柔らかな前後サスペンションもあって、T100の世界はすべてが穏やかに、ゆっくりと動いていく。シングルディスクのブレーキは気持ち長めに制動距離を見積もって、余裕をもって減速。そこからゆっくりと車体がバンクしていくから、車体の向きが変わったなぁ、と感じてからアクセルオンすればいい。

画像: フラットなシートは贅沢な柔らかさでライダーを包み込む快適さ。欧州車としては珍しい座り心地だが、この感触すらもクラシックな味わいのひとつと言える。

フラットなシートは贅沢な柔らかさでライダーを包み込む快適さ。欧州車としては珍しい座り心地だが、この感触すらもクラシックな味わいのひとつと言える。

ひとつの動作を終えた後に次のアクションへ

T100は運転に忙しさが無い。決しては速くは無いけれど、でも、それでいいのだ。速いオートバイは他にいくらでもあるのだから。

英国車の愛好家が今、ボンネビルに求めるもの。それは鷹揚さを失わず、自分なりの走りの世界に耽溺できるかどうか、だろう。そういう意味でのT100は、1200㏄の上級機種たちよりも正しくクラシックスポーツだ。

これぞ王道、真なる英国車らしさ。そう断言してもかまわないと思う。(文:北岡博樹)

This article is a sponsored article by
''.