クラシックの中に最新技術をさりげなく
水冷化されたボンネビルT120と基本的に同じエンジンを搭載するスラクストンR。しかし、このバイクのキャラクターはT120とはまったく異なっている。「スロットルを開けなくても気持ちいい」ボンネビルに対し、このスラクストンRは「加速するたびにワクワクする」というキャラクターだ。
これは両極端と言っていい特性なんだけれども、それをひとつのエンジンでそれを表現してしまっているところが感動ものだと思う。

スラクストンRの最高出力は実に97馬力。スロットルを開けるとガツンと路面を蹴飛ばして加速する。もちろん同社の3気筒エンジンを搭載するスポーツモデルに比べると絶対的パワーは届かないが、いまオートバイを走らせているという達成感がすさまじい(笑)
スロットルを開ける歓びに満ちあふれている、とはまさにこのことだ。
ダイレクト感に溢れるハンドリング

足まわりは前後17インチホイールを採用。ハンドリングは軽快かつ穏やかなボンネビルより、クイックでダイレクトなもの。セパレートハンドルをはじめとしたかなり前傾なライディングポジションもあって、雰囲気満点だ。
試乗車はトラックレーサー・インスピレーションキットを組み込んだロケットカウル仕様で、よりカフェレーサームードを高めていることもあり、走り出した瞬間から自己陶酔モードがONになる。

フロントの倒立フォークやオーリンズ製のリアサスペンション、ブレンボ製ブレーキの確かな性能もあって、交差点ひとつでも楽しい。また、スラクストンRにはエンジン特性を変化させられるライダーモードに「レイン」と「ロード」に加えて「スポーツ」が設定されている。ABSやトラクショコ
ントロールも装備されているので、あらゆる使用状況や路面コンディションにも対応できる。


スラクストンRは、トライアンフが言う「モダンクラシック」の名の通り、現代的な高性能をも備えているのだ。ここまで割り切って男らしいバイクも現代では珍しい。硬派な男のカフェレーサーとして、最高の評価を贈りたいと思う。(文/北岡博樹)
