ルの元祖はやはりトライアンフだ。すべてが刷新された新型スピードトリプルRでは、積み上げた技術で、ハッキリと他との違いを見せつけたと言っていいだろう。
スペックだけ見れば上級者向き。だけど初心者もワクワクする!

なにがスゴいかって、この新型スピードトリプルRは、エンジンが恐ろしくシルキーだ。後発のヤマハやMVアグスタのトリプルは、昨年までのトライアンフのフィーリングに近い、3気筒ならでは力強さを誇示するかのようなパワー感なのだけれど、去年リリースされたタイガー800系に続くように、スピードトリプルRは、4気筒のように滑らかに、気持ちよく走る。そして、その裏側に3気筒独特の低速トルクをさりげなく潜ませているのだ。

ちなみにこのオートバイの最高出力は140馬力。数字だけ見れば、とてもじゃないけれど普通の腕前で操れるようなパワーじゃない。なのに、素晴らしくシルキーなエンジンフィーリングは、ライダーモードを「ROAD」あたりにしておけば、どこからスロットルを開けても怖くないし、ちょっとくらいライダーがミスをしても、そこは3気筒ならではの低速トルクがカバーしてくれる。

もちろん、それはエンジンだけの問題じゃなくて、トライアンフ全車に共通する特徴でもある強固なフレームや、「R」に装備された前後のオーリンズ製サスペンションが助けてくれている部分も大きいのだとは思う。
でも、そういった細々したメカニズムの話などを全部抜きにして、純粋に走って感じるのは「スキルを問わず、誰でも楽しめる140馬力」って、きっとこういうことなんだろうナァ、っていう純粋な驚きだった。

でも、こうやって書いても「いや、そうは言ってもすごく速いんでしょ? 簡単に扱えるなんて思えないよ!」という疑念も出ると思う。実際のところ、ホントに速いので、それを否定はしません。
けれども、カチッとしたブレーキフィーリングでスピードのコントロールは自由自在だし、トラクションコントロールもあるから、車体を深くバンクさせても怖さがまったくない。

その「速さ」に身体が馴染む
スピードトリプルRというバイクは、いつの間にか大パワーに恐怖を感じなくなってしまうオートバイなのだ。表向きは強烈140馬力のストリートファイターなのに、実は優しさに溢れるというのが裏の顔。
あ、でもライダーモードを「TRACK」にすると、本当にスーパースポーツ同然に鋭くなるので、そのあたりにはご注意を(笑)
(文/北岡博樹)